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2015年06月10日
家具のフクタケのつぶやき家具販売店は最盛期の1982年の30,198店舗が、2007年の時点で10,111店舗と3分の1になり、まだ減少傾向は続いています。
売上はバブルの最盛期19991年に比べ半減しています。
この原因は何か?住環境の変化でタンスがクローゼットに変わり、
下駄箱や食器棚は新築時にハウスメーカーで造り付けになっています。
住宅事情の変化も大きいでしょう。
またIKEAやニトリなど安価な海外製の家具が大量に輸入されるようになったのも一つの原因一つだと考えられます。
それでは家具業界は住宅事情の変化と安価な海外製の家具により衰退してしまった“かわいそうな被害者”なのでしょうか?
私にはそう見えません。家具販売店が利益率の高さを重視するあまりお客様を軽視したからだと私は考えます。
家具屋は基本的に利益率を重視します。
とにかく安く仕入れて出来るだけ高く販売する。企業としては当然かもしれません。
その為に大型家具店では競合他社とバッティングを避けるため、オリジナル家具をメーカーに依頼して作ることが多いです。
オリジナル家具を作る時は、販売店はまず販売価格と仕入れ価格を決めます。
その時、利益率は通常より高めに設定されているので、メーカーは通常の家具より安く作らなければなりません。
メーカーも企業です。それでも利益を出す為に、プロパーで生産している家具の工程省いたり、
より安い材料を使ったりと無理なコストダウンをする事になります。
結局の所販売店の利益だけを確保する為に家具の品質を落とす事になってしまいます。
例えば、10万円で仕入れたソファを30万円で販売するのと、20万円の仕入れたソファを30万円で販売する。
これらは会社を経営して行く上ではどちらが正しいといえば、より多くの利益が残る方が正しいと言うことになるのだと思います。
しかしこれをソファを実際の買ったお客様の目線でみたらどうでしょうか?
購入価格は同じでもお客様にとってどちらが得かと言うと、原価の高い家具の方が良いに決まっています。
では、もし10万円のソファを30万円で買ったお客様どうでしょか?
当たり前ですが安い分座り心地は良く無い、耐久性は短い。
そしてお客様はこう考えるようになるでしょう。
”高い家具を買ったけど、座り心地も良く無いし早くダメになった。高い家具を買っても仕方が無い”
そう考えるのは当たり前です。
汗水垂らして働いて得たお金で買う家具ですよ!シビアになるのも当然!
こういった経験をされたお客様はきっと家具を買う意味はないと考えて、
ニトリやIKEA、アウトレットの家具屋で家具を買うようになるでしょう。
そして、IKEAやニトリの方はその点良心的です。
お客様に品質への過剰な期待を抱かせません。
だから日本ではIKEAが大塚家具を抜き、日本進出わずか7年で647億円の売上高で、これはニトリにつぐ売上高です。
この事実が、お客様の家具を見抜く目は正しいことが証明しています。
あと、付加価値を付けて家具を販売するという言葉も耳にしますが、
そもそも家具が工場で完成した時点で家具の価値はすでに決まっています。
その後価値を加えたとしても、絵に書いた餅です!
そうする事で家具をより高く販売することはお客様を欺く事になるはずです。
私は今の家具業界衰退の原因は高い利益率を求める家具屋の経営方法にあると考えています。
利益率重視の販売方法がお客さまの家具への信頼を失わせてしまった為です。
最古の木造建築物を建立した飛騨の匠の流れを汲む汲む飛騨の家具メーカー、いまでは世界一の曲木の技術を有します。
旭川から世界を目指し、ヨーロッパでも評価の高いカンディハウス。
他にも素晴らしい家具メーカーが沢山あります。
販売店が原因で日本の素晴らしい家具の良さ伝えることが出来ず、ただ高いだけの家具に思われてしまう。
家具メーカーの世界に誇る高い技術力、志もなくただただ自社の利益だけを考える家具屋。
残念ながら、このアンバランスな状況が日本の家具業界の現状です。
今の時代のお客様の要望に的確に答えているのがIKEAやニトリでしょう。
もう少しお客様の立場に立った販売方法を取る時期ではないでしょうか。
家具の福岳
小川直樹